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ご依頼企業インタビュー

研修のペーパーレス化を実現した「日立研修アプリ」
株式会社日立総合経営研修所 様

株式会社日立製作所が日本初のコーポレートユニバーシティ(企業内大学)を設立したのは1961年。創業50周年事業の一環として米ゼネラル・エレクトリック社(GE)のクロトンビルを手本に設立された。現在は、「Talent Managementを含むLearning&Developmentの最先端を走る」をビジョンに掲げ、常に時代の最先端をめざし研修を行っている。その中で開発したのが、タブレット用の「日立研修アプリ」。開発の経緯やアプリについて、株式会社日立総合経営研修所ラーニングテクノロジーグループの石川豊臣氏、高嶋宏明氏に話を聞いた。

■グローバルのトップランナーを目指して

—アプリの前に、御社が現在どのような取り組みをされているのか、研修事業について教えてください

この5年間は、「ワールドクラスのグローバル・コーポレートユニバーシティ」をめざし、グローバルビジネスに資するリーダーを育成するために、さまざまな取り組みをしてきました。

施設面としては、今年10月我孫子キャンパスをグローバルリーダー育成にふさわしい環境にリニューアル。研修受講のためにマインドセットのシフトを促す通路や、新聞・書籍・雑誌を電子的にタブレット上で閲覧し紙をすべてなくしたカフェ・ライブラリ、受講者間の議論を促すファイア・サイド・チャットの空間、イスラム教徒の礼拝などに使われる「Pray room」などを完備しています。さらに、ハラルに対応した食事の提供も可能です。また、大森と品川の研修所についても、来年3月いっぱいで上野に移転するなど外的環境を整えていきます。研修コンテンツ面では、社内経営幹部に加え、大学の専門家やコンサルタント等で構成されるアドバイザリー・ボードを組織し、外部の知見を取り入れながらグローバルリーダーを育成するプログラムを開発しています。選抜研修は、次代の経営者候補に対し、“志”を持って事業課題の完遂に向け取り組むことを決意し、価値観・目的意識を共有しながら他者を巻き込み、事業のグローバル成長を実現できるリーダーを育成するために全編英語によるインターバル形式のセッションを実施しています。階層別研修は、「グローバルに事業をけん引できるリーダー」を各階層で増やすことを目的にグローバルパフォーマンスマネジメントにて定義しているコンピテンシーを伸長させるリーダーシップの型や「顧客にとっての新たな価値の創造」「勝つシナリオを創る」の理解、およびその実践と成果獲得を徹底的に学びます。

グローバルな最先端の研修所をめざすこのような取り組みの一環として、ラーニングテクノロジーも導入しました。


お話をうかがった ラーニングテクノロジー部 部長代理 石川豊臣 氏(左)、主任 高嶋宏明 氏

—タブレットを使った研修を取り入れた目的は何ですか。

コンセプトは「ペーパーレス」です。現在、タブレットを使う研修は100種類ほどあります。その研修の受講者は、1回につき20〜30人程度。研修テキストを紙で用意するとなると、多いときには一人1,000ページも印刷しなければなりません。日立グループではフリーアドレスを採用している会社・事業所もあり、保管場所にも限りがあります。また、紙だと机の書類に埋もれてしまい、復習のために見返すことがない場合もあります。

また、弊社の研修では、期に約8,000人が研修を受講しています。
そのような背景があり、印刷コストを下げ、環境に配慮できるタブレットを導入しました。現在では、3カ所の各拠点で、合計250台のタブレットを使用し研修を実施しています。

■シンプルなアプリを

—アプリ自体はとてもシンプルな画面ですね。このような画面になった理由はありますか。

このアプリは、研修所のみで使われます。研修を受けに来る社員からすれば、研修所で初めてタブレットに触れ、その後1日~2日使用するのみです。初めて使うときでも「使い方がわからない」とならないように、シンプルにしました。

—アプリの機能について教えてください。

機能は、「出席登録」「リアルタイム投票」「成果物(写真)の持ち帰り」、そしてメインとなる「アンケート」の4つです。
「出席登録」では、研修の開始前に“出席ボタン”を押してもらい、出席時刻を正確に管理することができます。また、紙でいろいろ資料を渡しても全部は見てもらえていません。そこで、今まで紙で案内していた生活案内を出席登録後の画面に表示することで、より注意をして見てもらえるように工夫しました。

「リアルタイム投票」は、研修にインタラクティブ性を持たせるために新しく導入した機能です。事前に設問をアプリにセットし、講師の合図にしたがって受講者が設問に回答すると、投票結果を瞬時にグラフで共有することができます。また、過去の結果も閲覧できるので、その場で過去の結果と比較することもできます。この機能により、従来は一方通行になりがちであった講義の場面においても、受講者の意見を取り入れながら進めることができるようになりました。

「成果物(写真)の持ち帰り」は、例えば受講者がグループワークでホワイトボードに書き込んだ成果物を写真で撮ってメールで送る機能です。ただ、メールが重すぎると負荷がかかるので、添付は3つまでに制限しました。

メインは「アンケート」機能です。今まで紙で書いてもらい、その結果を事務局が手入力していましたが、アプリ化することで電子管理ができるようになりました。

—アプリの利用でどのようなメリットが生まれましたか。

紙のアンケートでは、書き漏れや回収漏れがありましたが、アンケート機能を導入することで、それらはなくなりましたね。
また、アプリを導入した事で、紙に記載された情報をデータ入力する作業がなくなり、弊社スタッフの作業を減らすことができました。自由記述(コメント)などもデータとして保存できるようになったこともメリットです。

—実際に使った受講生さんたちの評価はいかがですか。

最初は賛否両論あり、「スマートですばらしい」といった意見と「使いづらい」といった意見の両方がたくさんアンケートのコメントにありましたが、今はコメントが随分少なくなりました。まだまだ気にされる受講者はいらっしゃいますが、一部の人にとってはタブレットは空気みたいな、あって当たり前という存在になりましたし、今後それがより多くの人に拡大していくような気がします。

■開発は、かゆいところに手が届いた

—どのような進行スケジュールだったか教えてください。

3月~4月頃から検討を開始して、委託先を選定し、6月から開発に着手しました。8月末に一部機能でリリースし、全機能が備わったのが9月からです。開発期間は実質3ヶ月、今回の委託先にはかゆいところに手が届く開発をしてもらえました。口頭レベルですぐ直してもらえる速さがよかったです。

■グローバル人財に対応するというミッションのために

—今後はどのようなアプリにしていこうというビジョンはありますか。

今後、日立グループでは多様な人財が国を問わずリーダーになることが求められています。研修所としても、海外から研修者が来ることを考え、アプリも英語に対応する予定です。

また、「ビッグデータ」の活用がラーニングの世界でテーマとなっています。企業研修においては、まだ事例も少なく、まだ具体的な方策や効果は出ていない状況です。弊社としましても、今後検討していきますが、アプリを使ってデータを収集し、それを解析することで研修の品質改善や受講者のスキル向上に活用できるようになれば、本当の「グローバルでのトップランナー」になれるのではないかと考えています。

記事公開日:2015年12月21日